3.04.2014

「唯美主義」と「ラファエル前派」展

寒さが舞い戻った週末、三菱一号館美術館にて開催中の「ザ ・ビューティフル英国の唯美主義1860~1900」展へ。唯美主義は産業革命後の功利主義、商業主義を否定し「芸術のための芸術:Art for Art's Sake」を標榜した芸術運動のひとつです。ヴィクトリア朝後半の世紀末のデカダンスな雰囲気に酔いしれる展覧会でした。

《真夏》, Midsummer, Albert Moore
けだるい真夏の表情と退廃的なテーマを描きつつも眩しい蛍光色彩にハッとしたアルバートムーアの絵
マリーゴールドの花は元気はつらつのイメージですが花言葉には「悲哀」の意もあるそうです

絵画だけでなく、建築、家具、書籍デザインなどはじめ、かのウィリアム・モリスのテキスタイルの展示もありました。唯美主義=「唯(ただ)、美しく」の語感の通り、19世紀以前の物語性や意味を持った絵画ではなく、エロスまでも取り入れたただ単に美しさを表現したもので、ほげ〜と見とれてしまうものが多かったです。



フレドニック・レイトン《パヴォニア》 
黒髪のイタリア美人に孔雀の羽
これでもかという美しさの追求。完璧デス!

モチーフとしては「ひまわり=男」「ゆり=女」「孔雀=美」の3つが中心的に用いられていました。絵画のところどころに一見無関係な動物や物が描かれてるのが面白かった。
今回の展示は「ヴィクトリア&アルバート美術館」の所蔵品です。同美術館にて去年回顧展あったミュージシャンのデヴィッドボウイ、1971年のアルバム「世界を売った男」は唯美主義とも言っていいそれは美しいアルバムジャケットです。


ボウイの回顧展、日本でも開催してほしいな!


続いて、同時期に開催中の森アーツセンターギャラリーの「ラファエル前派」展へ。

こちらはテート美術館の贅沢な名品。ミレイ、ロセッティ、ハントを中心とする若い作家たちが起こしたアート運動。みずみずしくて、植物や風景人物も注意深く自然に忠実に描いていて、その精神性に震えるものがありました。


ミレイ《オフィーリア》(部分)
すべてがうつくしい






また会場には同時期に活躍した画家たちの恋愛相関図が展示してあり、その恋愛ドラマ顔負けな恋愛関係の凄まじさと滑稽さに飽きれて、思わず声を出して笑ってしまうものがありました。
美しさを追求するって大変な業ですね!
まさかの本人たちも100年以上の時を経て、自分たちの赤裸々なスキャンダルな生き様がこんなところで図で説明されているなんて考えてもいなかったでしょう。このラファエル前派の流れが前述の唯美主義へと受け継がれていきます。セットで見たらいろんな発見があって(百合の花の描写が多いこと、当時の流行の髪型や顔立ち、ファッション等)、大好きな絵と植物がまたこうして増えていくことに小さな喜びが沸々とこみ上げてきました。



会場外には現実世界の花が春を待っています。
  

三菱一号館美術館の階段下にバラの誘因
春の姿を想像すると喜びがこみ上げてくる図

六本木ヒルズの一足早いチューリップは
寒さに耐えながら咲いていました。
季節の先取りは植物も大変だよな〜

季節感だけは旧暦に戻せたら無理がなくなるのにな…
と同情がてらに思いました。


「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900」三菱一号館美術館 2014.1.30 ~ 5.6  
「ラファエル前派展 」森アーツセンターギャラリー 2014.1.25~ 4.6