先日横浜にてオランダのガーデンデザイナーPiet Oudolf(ピィト・アゥドルフ)氏 のドキュメンタリー映画を見ました。
その名はNYのハイラインの緑地やイギリスのアートギャラリーハウザー&ワース(Hauser & Wirth)の庭などで良く知られています。
その名はNYのハイラインの緑地やイギリスのアートギャラリーハウザー&ワース(Hauser & Wirth)の庭などで良く知られています。
宿根草とグラス植物で自然味あふれる植栽デザインを世界各地で手がけています。
映画ではデザイン工程や制作過程などのほか、Pietさんの半生や人柄が感じられ、ヘッドガーデナーや現場の作業者への指示で語尾に必ず「そう思わない?」とか「どうだろう?」という共感を求めるフレンドリーな語り口が印象的でした。(若い頃のPiet氏はDavid Bowieにちょっと似ててハンサムでセクシーなとこも魅力です。)
庭づくりとは、植物への愛情と極めてパーソナルな世界観、価値観から生まれるものであることをあらためて実感しました。
Piet氏の庭の美しさに人は魅了されます。
写真だけでも何時間も見とれてしまいます。
庭は生きているから、季節ごとに変化して生と死を繰り返します。
人は生まれてから死ぬまで一方方向のベクトルで否応なく進みますが、植物は地面上では芽吹いてから枯れるまで毎年生と死の姿を繰り返します(宿根草は休眠状態です)。
ガーデンデザイナーやガーデナーは、植物というキャストを揃えて舞台を演出し、自然の中に見たい景色を作りだします。萌芽のきらめきから、枯れゆく時まで、季節ごとに変化する植物の美しさをまさにThe Art of Plantingとして絵画のように描きます。
それは美的感覚だけではなく、植物そのものの性質や生育環境を熟知していなければできないことであり、植物選びから管理の方法までその土地や環境条件下で作り出し、維持していくのは簡単なことではありません。
あらためて考えます。
この自然味あふれる(ナチュラリスティックな)庭が、美しさだけではなく、多くの人が共感するのはなぜだろう?
それはきっと自然の中で心地よい感覚的なものが呼び起こされるからではないかと思います。記憶だったり、感情だったり、他愛のないものかもしれないけれど心の中で生き続けるなにか大切なもの。
この映画では、数々の実例よりも庭づくりへの情熱がなによりハートに響きました。
自身の仕事を振り返り、私はなぜこの道を進んでいるのだろうかと内側を深く潜って見つめ直したくなるほどでした。
今回の映画上映を実現してくださったPratensis(プラテンシス)の皆様、お声かけしてくれたはるはなファームの鈴木さん、ありがとうございました。
プラテンシスさんたちが昨年2月に同じく横浜にて開催した勉強会に参加させていただいた時に、ガーデンデザイナーの平工詠子さんが「私たちはそういった景色が街中に当たり前にあるようにしていけばいい」という言葉がずっと頭に残っています。
この映画を通じて、庭づくりに注ぐ情熱が受け継がれて広がっていくことと思います。
【おまけ】
横浜の赤レンガ周辺の新港中央広場には、球根や宿根草が織りなすまさにナチュラリスティックな植栽が広がっています。植物が生長して年々素敵になっています。
今は冬ならではの、枯れ色の世界。
Piet氏も映画のなかで言っていました。
枯れ色の、グレーも、茶色も、黄金色も、重要な色なんだと。
これからは球根植物の出番です。
寒い日はまだまだ続きますが、球根が出てくると春の兆しを感じますね。