3.05.2019

「秘密の花園」と「ヴィオラ母さん」

大人になってから同じ本を読んで違う印象を受けることがあります。
私にとって、最近読み返した古典童話の「秘密の花園」もそのひとつでした。


「秘密の花園」は、ロマンティックでガーリーな題名と松田聖子の「秘密の花園」の曲のイメージによって、長らく記憶がスイートなピンク色のイメージでしたが、再読して「あれ?こんなだったけ!」と思い返しました。


物語は、主人公のメリーはインドで両親を亡くしてイギリス・ヨークシャーのおじさんの家に引き取られ、その家には体と心が弱っていた少年がいて、そのふたりが、自然の力を親しみつつ、「育つもの」の成長に手をかけながら、生きる力をつけていく展開です。


物語に出てくる子どもたちがとてもひねくています。わがままに育って悪態つきっぱなし、周りの大人たちを始終辟易させています。彼らが孤独で寂しくて、自分で自分を精一杯守っているからで、それは健気な姿であります。
そうして、自然に触れて、植物が育つ姿に関わりながら、自分たちを縛り付けていたマイナスの思い込みから脱却していきます。


話を読み進めながら、私にはそのふたりが漫画家のヤマザキマリさんやAppleのスティーブ・ジョブズの生い立ちを連想させました。
子どもながら自分のトリセツを得てして、自分自身を形作ってきた突拍子もないほど個性的で魅力的な人たちです。
(ヤマザキマリさんの近著、母リョウコの物語「ヴィオラ母さん」も痛快、最高でした!)


秘密の花園では、春を待ち焦がれる設定になっていて、インドで生まれ育った主人公メリーと、生まれて一度も外に出たことがない病弱な少年は、まだ春を見たこと、感じたことがありません。

春ってなに?どんな匂い?春が来るってどういうこと?という期待と興奮していく様子を、冬のあいだに繰り返し読みながら私も同じ気持ちを重ねて今年の春を待っていました。




チューリップの芽が出てきた!
春の雨で土の中も動き出してきたぞ



黒柳徹子さんと同い年のリョウコさん。
この時代の人は本当に悲しいこととか表に出さなくて、
それでいて、破天荒ながら「生きてるって素晴らしい!」という底力を
教えてくれるのだ。




ああ、春が来た!